株式

2024.07.29

今回お話を伺ったのは…

森口亮

森口亮

個人投資家、投資系YouTuber。1983年、埼玉県生まれ。元美容師。「Excelで決算数値を管理して、有望な成長株を中・長期的に狙う」という手法で資産を10倍に。その後も着実に資産を増やしている。著書に『1日5分の分析から月13万円を稼ぐExcel株投資』(KADOKAWA)がある。YouTube「毎日チャート分析ちゃんねる」やnote(https://note.com/morip)を日々更新中。

「夏枯れ相場」とは?

夏枯れ相場とは、株式市場において夏から秋にかけて取引が減少し、価格変動が少なくなる現象を指します。主な要因として、多くの投資家(特に外国人投資家)が休暇を取ることや、企業の決算発表による変化が少ないことが挙げられます。このような季節性のある動きは、アノマリー(市場の傾向)としても知られています。
一般的に、夏枯れ相場は6月頃から9月頃にかけて見られます。この期間中、取引量が減少し、市場の流動性が低下するため、相場が閑散となります。
株式市場には「閑散に売りなし」という相場格言があります。これは、大きな動きが一段落した後、相場が上にも下にも行かず、無風状態になることを示しています。この状態が続くと、多くの投資家は嫌気が差し、持ち株を売りたくなることもあります。
しかし、ファンダメンタルズの影響で下げたものでなければ、一旦売りが一巡すると急激に反騰することもあります。こうした状況では、うっかり売ってしまうことを避けるべきと教えてくれるのが「閑散に売りなし」という格言です。
このような点からも、夏枯れ相場は投資家にとって、冷静に分析さえできれば買い時や売り時のチャンスになることもあるといえるのです。

過去の夏相場を検証!

過去の夏相場を振り返ると、日経平均株価において必ずしも閑散とした相場で終わっているわけではありません。
例として、過去の6月から9月の日経平均の動きをいくつか見てみましょう。
2015年:中国の経済減速懸念から8月に急落(チャイナショック)
2016年:英国のEU離脱決定後、一段落して安定相場に復帰
2019年:米中貿易摩擦の影響で8月に不安定な動き
これらの例からも分かるように、夏相場は必ずしも穏やかであるとは限りませんが、取引量が少ないため、相場に材料が伴った時には大きな動きを見せることもある点には注意が必要です。

2024年の夏相場はどうなる?

2024年の夏相場については、現在の値動きを踏まえた見通しを立てることが重要です。ぜひ、以下のポイントに注目してみましょう。

米国の金融政策の転換点

米国のインフレ率は鈍化傾向にあり、年内の利下げ確率が上昇しています。利下げ時期が早期となる期待から、S&P500やNASDAQは高値更新を続けています(2024年7月16日現在)。FOMCでは9月に利下げが開始されるとの予測が株価に織り込まれており、夏季の商いが少ない時期にこの見通しが変わると大きな変動が生じるリスクがあります。

日本の金融政策の転換

一方、日本では緩和政策の修正が進んでおり、2024年3月にマイナス金利が解除され、実質的な利上げが始まりました。7月にも追加利上げがあるとの噂があります。米国とは異なり、緩和の終了と引き締めへの転換が進行中であり、見通しが変わると大きな市場変動が予想されます。

企業業績

多くの日本企業は3月決算であり、夏季は第1四半期決算発表の時期に当たります。今年は急激な円安が進行しており、企業の想定為替レートと現行レートに大きな開きが生じています。これにより、業績を修正する企業が増える可能性が高く、特に個別株には大きな変動が見られるかもしれません。また、円安とインフレの影響で消費者マインドが低下しており、企業業績に影響を与える要因となっています。

国際情勢

2024年は米大統領選挙の年であり、共和党のトランプ氏有利の見方がある中で、同氏の政策を見据えた先回りの資金が動き始めましたが、7月13日の公演中に同氏が銃撃され負傷するニュースが流れたり、また21日には現職大統領のバイデン氏が大統領選撤退を表明したりと、選挙戦の動向や突発的な事件は市場に大きな影響を与える可能性があります。
2024年の夏相場は、米国の利下げ期待と日本の金融引き締め、企業業績の修正、国際情勢の変化など多くのファンダメンタルズの要因が絡み合っています。これらのポイントを注視し、市場の動きを冷静に分析することが求められます。

株の売り時・買い時を見極める!投資行動のコツ

夏枯れ相場でも、株の売り時・買い時を見極めるための分析のポイントがあります。

テクニカル分析は「ダマシ」に注意

テクニカル分析の基本を理解し、特に重要なサインが重なるときには、そのサインに従うことが賢明です。しかし、夏枯れ相場は商いが少ないため、「ダマシ(※)」が出やすい時期でもあります。例えば、移動平均線やRSIなどの指標を確認し、トレンドの継続や転換を見極めることが重要です。
※ダマシ:テクニカル分析において、買いサインや売りサインなどが出ているのに、理論通りの動きとならず反対の動きをすること。

ファンダメンタルズ分析は必ずチェック

テクニカル分析だけでなく、ファンダメンタルズ分析も併用することが重要です。例えば、売りのサインが出たとき、それが「ダマシ」かどうかを判断するために、以下の点を再確認しましょう。

融政策の変化:利上げや利下げの動向
リスク要因の発生:新たな経済リスクや地政学リスク
企業業績:個別企業の業績やネガティブなニュースの有無

株価は短期的にはブレることが多いですが、長期的にはファンダメンタルズ(景気や業績)に沿って動きます。ファンダメンタルズに関係なく下落している場合、それは「ダマシ」である可能性も考慮すべきです。

夏相場におけるリスク管理

リスク管理は特に夏相場において重要です。以下のポイントに注意してリスクを管理しましょう。

切りラインの設定:現在のポジションについて明確な損切りラインを設定し、損失を最小限に抑える
ポジションの分散:時間や金額を分散してポジションを作り、リスクを分散する

また、PTS(私設取引システム)も活用することで、市場が閉じた後でも取引が可能となり、より柔軟な投資戦略を実行することができます。これにより、日中の相場変動に左右されずに、冷静に取引を行うことができます。

秋の下落は、年後半の上昇に向けた最大の仕込みどき?

この記事では、「夏枯れ相場」とは何か、過去の夏相場の動き、2024年の夏相場の見通し、そして分析のポイントについて解説しました。夏枯れ相場は、投資家にとっては静かな期間といわれますが、史上最高値をこの時期に更新した2024年は異例の年といえるかもしれません。

とはいえ、例年通りに商いが少ない傾向はあり、アノマリーの観点から見ると、秋(9〜10月)には下落しやすい傾向があります。歴史的に、9月と10月は市場が暴落することが多い月とされています。しかし、年後半にかけては新年度に向けて資金が流入し、プラスに転じることが多いため、夏枯れ相場から秋の下落を経て年末に向けての絶好の仕込みどきになる確率が高いのです。

ただし、これは確率が高いだけであり、毎年必ずそうなるわけではありません。夏枯れ相場から年末相場を乗り越えるためには、冷静な分析とリスク管理の徹底が鍵となります。市場の季節性やアノマリーを正しく理解し、戦略的に行動することで、投資の成功を目指しましょう。
本記事に掲載されている全ての情報は、2024年7月16日時点の情報に基づきます。
あくまでも森口亮さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。

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