株式

2024.07.22

本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

キリオフィス代表、株式投資スクール講師、CFPファイナンシャルプランナー。個人投資家として2010年より株式投資をはじめ、5年で資産を10倍に増やす。数字オンチの人も含め普通の人が趣味として楽しめる株式投資を広めるため、講師、講演者、パーソナルトレーナーとして活動中。講座は特に女性に人気で、毎回キャンセル待ちが出るほど。著書に「月収15万円からの株入門 数字オンチのわたしが5年で資産を10倍にした方法」「ド文系女子の株の達人が教える 世界一楽しい!会社四季報の読み方」(https://www.amazon.co.jp/dp/B09PB1FT8H/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1)など。
YouTube:藤川里絵の女子株CH『はじめの一歩』 - YouTube(https://www.youtube.com/channel/UCrsiRmd8Bq7CmaXljd8PDKw

Introduction

6月17日(月)に会社四季報夏号が発売されました。以前は、金曜日に発売されることが多かったのですが、ここ何冊かは月曜日の発売が続いております。定期購読をしていれば、土曜日に配達されますので(一部地域はのぞく)、週末にゆっくり物色することができます。店頭で買う投資家より随分有利になりますので、四季報ラバーの方は、定期購読することをおすすめします。

会社四季報夏号のいちばんの特徴

1年に4回発売される四季報を、1年に一度だけ買うとしたら、春・夏・秋・新春号のどれがいちばん良いかと聞かれることがよくあります。四季報で銘柄選びを本気でしたいと思うなら、4冊とも続けて買うべきですが、1冊だけでまずは気分を楽しみたいというのなら、夏号をおすすめします。
日本では、全上場企業約3,900社のうち約2,300社が3月決算になります。夏号をイチオシする理由はそこにあります。というのも四季報には、足元で進行している期と来期の予想が掲載されます。3月決算の場合は、春号と夏号の間に本決算が発表されるので、夏号では、来期予想が更新されます。
今回の例でいうと、2024年四季報の春号では、2024年3月期と2025年3月期の予想値が掲載されましたが、夏号では2025年3月期と2026年3月期が掲載されます。ここで登場する2026年3月期の予想値は、夏号で初お目見えということです。
今期だけでなく、来期まで業績が伸びるかどうかを確認できるのは、投資家にとって非常に重要な情報です。夏号では、全体の60%近くを占める企業の来期予想が初登場なので、見応えという点においてイチオシするわけです。

四季報夏号での銘柄選びのポイント

3月決算銘柄においては、今期はもちろん、来期の予想値も伸びているものを選びます。株価は常に先読みされますから、今期が絶好調でも、来期は失速すると予想されれば、下落する可能性があります。ベストパターンは、24年3月期、25年3月期、26年3月期と、3年連続で本業の儲けである営業利益が伸びていることです。もちろん売上高も伸びていることが条件ですが、売上高の伸び率よりも、営業利益の伸び率のほうが高ければ、利益率が改善されているということなので、より有望株と言えます。
また、欄外の矢印が上向きであることも条件に加えます。この矢印は、足元で進行している期の営業利益が、前号の春号から増額されていることを表します。上向きの矢印が1本であれば、前号比で5%以上30%未満の増額、2本なら30%以上の増額となります。つまり上向きの矢印は、業績が上振れ傾向であることをあらわし、業績の勢いがある銘柄の印です。
3月決算銘柄については、このように新年度予想と欄外の矢印にフォーカスして、銘柄を絞っていきます。

12月決算銘柄が狙い目

じつは、わたしが最初にチェックするのは、3月決算銘柄ではなく、12月決算銘柄です。12月決算銘柄の会社予想と、四季報予想の乖離率が高いものに付箋を貼ります。なぜなら、12月決算銘柄の直近の決算は第1四半期決算で、会社の予想と四季報の予想が乖離しているというのは、第1四半期決算の進捗率が高いのにもかかわらず、会社は通期予想を控えめに見ている可能性が高いからです。こういった場合、その後に会社が上方修正を行い、四季報の予想に近づいてくることがよくあります。
会社予想と四季報予想の乖離は、欄外のニコちゃんマークでわかります。ニコちゃんマークがひとつなら会社予想と四季報予想の乖離が3%以上30%未満、ふたつなら30%以上です。
12月決算銘柄は、500社程度と3月決算銘柄に比べるとだいぶ少ないので、手間もそれほどかかりません。

ウォッチ銘柄の業績推移を記録

ここまでは新しい銘柄と出会うためのプロセスですが、もうひとつ、新しい四季報が届いたらやるべき重要なことがあります。それは、保有銘柄とウォッチ銘柄の業績予想をスプレッドシートに記載することです。
たとえば3月決算銘柄なら、2025年3月期の予想が最初に出るのは、2023年夏号です。その後、秋号、新春号、春号、各号での会社の予想と通期予想を、随時記載していきます。
毎号記載していれば、業績の拡大に勢いがついたり、逆に鈍化したりといった些細な変化に気づくことができます。これには少し手間がかかりますが、人より先んじてチャンスを見つけたり、もしくはリスクに気付いたりできますので、毎回のルーティンとして継続しています。

業績予想のスプレッドシート事例 (藤川里絵さん作成)

四季報オンラインの先取り銘柄をチェック

さらにもうひとつ、四季報発売後のルーティンがあります。
紙の四季報発売前に、四季報オンラインでは先取りして、春号から夏号にかけて大幅増額される予定のサプライズ銘柄が公開(有料会員のみ)されます。選ばれた銘柄は、発表翌日に株価が上がることが多々ありますが、その後の利益確定売りで下がることもよくあります。紙の四季報が発売される頃に、株価が下がっていればチャンスです。
今回は、5月26日から6月4日にかけて5銘柄ずつ発表されました。四季報の発売の6月17日まで日数があるので、ちょうどいい具合に押し目をつけている銘柄を探します。サプライズ銘柄は、四季報記者さんが目をつけた有望銘柄なので、発売後にあらためて買い戻されることが多いのです。全部で50銘柄しかないのでチェックにそれほど手間はかかりません。四季報オンラインの有料会員さんにはおすすめのチート銘柄発掘法です。

毎日30分ずつ記事欄を読む

ここまでは、四季報発売直後になるべく急いで行いますが、一連の作業が終わったら、あとはのんびり記事欄を最初から読んでいきます。これは、投資対象となる銘柄をいち早く見つけるのが目的ではなく、ただ単純に好奇心が満たされるからです。新しい技術やサービスを知れたり、業界ごとの流行りを感じられたり、意外なビジネスに出会えたり。すぐには投資に結び付かなくても、頭の片隅に残っていた情報が、あるとき抜群の投資アイデアになることもあります。
お風呂に入る前の30分を四季報を読む時間にしており、だいたい1か月くらいで1冊読み終えます。

ワイド版ならではのお楽しみ

数年前から、四季報は通常版からワイド版に切り替えて愛読しています。ワイド版は、通常版の1.5倍程度の大きさなので、文字もずいぶん読みやすく、小さい文字を目を細めて読むストレスがなくなりました。そして、なんとワイド版には、通常版にはない”袋とじ”というお楽しみがあります。”袋とじ”なだけあって、そこには秘密の情報が隠されています。
今回の夏号には、V字回復ランキングと低PBRランキングが掲載されていました。低PBRランキングは、スクリーニングでわりと簡単にリストアップできますが、V字回復ランキングは条件の設定がむずかしいため、自分ではなかなか抽出できません。
V字回復銘柄の株価は、安値圏から上昇の初動であることが多いため、投資妙味があります。ランキング銘柄から気になるものがあれば、本ページに飛んで記事欄や業績欄をチェックして付箋を貼ります。
付箋を貼った銘柄は、四季報オンラインのウォッチ銘柄に登録して、毎日チャートをチェックして売買タイミングを見計らいます。最近はこのように紙と電子版の両方を組み合わせたハイブリッド利用が多くなりました。
以上が、わたしの四季報夏号の読み込み方です。四季報の読み方にルールはありませんので、ご自身が楽しいと思えるような読み込み方を見つけてください。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2024年7月8日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。
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