株式

2024.05.24

本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

キリオフィス代表、株式投資スクール講師、CFPファイナンシャルプランナー。個人投資家として2010年より株式投資をはじめ、5年で資産を10倍に増やす。数字オンチの人も含め普通の人が趣味として楽しめる株式投資を広めるため、講師、講演者、パーソナルトレーナーとして活動中。講座は特に女性に人気で、毎回キャンセル待ちが出るほど。著書に「月収15万円からの株入門 数字オンチのわたしが5年で資産を10倍にした方法」「ド文系女子の株の達人が教える 世界一楽しい!会社四季報の読み方」(https://www.amazon.co.jp/dp/B09PB1FT8H/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1)など。
YouTube:藤川里絵の女子株CH『はじめの一歩』 - YouTube(https://www.youtube.com/channel/UCrsiRmd8Bq7CmaXljd8PDKw

Introduction

新型コロナが第5類へ移行して1年、気軽に外出できるようになり、休日には街中の人出も増えました。最近は、ゲームセンターやボウリング、カラオケなど、街で気軽に楽しめるアミューズメント施設が増えているように感じます。「ディズニーランドやユニバーサルスタジオのような大型施設に出向くほどのエネルギーはないけれど、ちょっと気分転換したい」といったニーズが拡大しているようです。
今回は、このような「街角アミューズメント」に関連する企業の動向にフォーカスを当てていきます。例えば、最近「chocoZAP」というサービスで話題のRIZAPグループ株式会社 (2928)です。

ジムでカラオケ!? アミューズメント施設化する「chocoZAP」

とある1日、出かけてから帰宅するまで、何度chocoZAPの広告を見かけたことでしょう。品川駅の改札に向かう通路では、何台もつらなるデジタルサイネージに表示され、電車の中では車内広告、スマホを開いても、PCを開いても流れてくるバナー広告、そして自宅ポストにはチラシ広告。これだけ広告を目にすると、いやでも気になってしまいます。実際、わたしの周りでもchocoZAPに通っている人の話はちょこちょこ耳にします。
chocoZAPを運営しているのは、「結果にコミットする」スポーツジム・RIZAPでお馴染みのRIZAPグループ株式会社です。RIZAPは有名人の衝撃的なビフォーアフターを掲載した広告で日本国民に衝撃を与えましたが、いっときの人気は衰え、今は、chocoZAPの拡大に全集中しています。
chocoZAPのおもしろいところは、その名の通り“ちょこっと”すきま時間を活用した運動を提案している点です。本気のRIZAPから180度真逆にあるスタイルですが、「そこまで本気で鍛えたいわけではないけれど、日頃の運動不足は解消したい」といったゆる~い野望をもった層を取り込む作戦です。
冒頭でも述べたように、chocoZAP広告の猛勢による効果は絶大で、会員数(2024年5月15日時点の見込み)は2022年7月のサービススタートから2年弱で120万人となっています。また、全都道府県に出店されており、その数は1,500店舗。chocoZAP会員は、どこの店舗を利用してもよいため、外出先や旅行先でもふらっと利用できます。なんと5月10日には、高速道路の日本平パーキングエリア内に全国初出店し、長距離ドライバーのリフレッシュを促します。
ゆる~い気持ちでchocoZAP会員になったのち、本気で体を変えたいとやる気がみなぎり、RIZAPに入会する人も多く、RIZAP入会者の16.2%がchocoZAPの会員とのこと。まずは運動のハードルをできるだけ下げて一歩を踏み出してもらうという戦略は有効のようです。
また、chocoZAPのもうひとつの特長は、運動だけではなく脱毛、ネイル、ホワイトニングなどのセルフエステの設備が利用できること。加えて、店舗によってはカラオケ、ゴルフ、ピラティスが楽しめる設備や、勉強や仕事に使えるワークスペースまで揃っています。もはやちょっとしたアミューズメント施設ですね。

投資家視点で読み解くRIZAPの決算報告書

これだけの設備を24時間・365日使い放題で月額2,980円(税込3,278円)と破格のお値段。だいたいスポーツジムの相場は7,000円~1万円程度なので、金銭的にジム通いを渋っていた人のお財布もゆるみそうです。
ここまでの急成長を遂げるには、相当の広告宣伝費や、出店費用がかかると考えられますが、業績はどうなっているのでしょう? 投資家目線でチェックします。
ちょうど2024年3月期の本決算が5月15日に発表されました。
まずは着地の数字から。売上収益166,298百万円で前年と比べると7.6%増収です。一方、営業利益は△594百万円と赤字の着地で、出店費用が負担となっていることが分かります。ただし、前期は△4,948百万円でしたから、赤字幅は大幅縮小しています。四半期ごとの推移でみると、2023年10-12月期から営業利益は黒字転換しており、直近の24年1-3月期では、4,175百万円の黒字なので、着実に業績改善されています。
気になる新年度予想は、売上収益177,700百万円(前年比+6.9%)、営業収益は6,300百万円の黒字転換していることです。25年3月期は、さらなるサービス向上のため、70億円の投資を予定している中での黒字となっています。
具体的には、chocoZAP内で、ちょこっとサポート・コンシェルジュという会員へのパーソナル指導や食事アドバイスなどを行うサービスを拡充するようです。現状のchocoZAPは、無人のためマシンの使い方が分からないとか、店舗内の汚れが気になるとか、ルールを守らない人がいるなどといった問題点が浮き彫りになっています。このサービスが始まることによって、それらの不満解消にもつながるでしょう。また、励ましてくれる人がいたり、効果が目に見えたりしたほうがモチベーションも維持しやすいですから、そのための投資は必然に感じます。
ただし、投資家として無視できないのは綱渡りの財務状況です。自己資本比率は20.1%と、2023年9末につけた13.4%という最悪値からは改善されているものの安心できる数字ではありません。有利子負債が880億円超と多いことも、今後、金利上昇が見込まれる中で業績改善の足を引っ張ることになるかもしれません。現金及び現金同等物の期末残高は、130億円程度なので、有利子負債の大きさは無視できないものです。

こちらも要チェック!街角アミューズメント関連企業

chocoZAPとはやや毛色は違うものの、他にも「街角アミューズメント」としてこれからの動向が気になる企業をご紹介します。
一つ目は、ボウリング、カラオケ、ゲーム、時間制スポーツなどが楽しめる複合型のアミューズメント施設を展開するラウンドワン(4680)。2024年3月期は過去最高売上、最高利益で着地し、さらに新年度はそれらを更新する予想です。とくにクレーンゲームが人気で、よく街角でも外国人旅行者が遊んでいるのを見かけます。ラウンドワンは、海外展開も積極的で、景品ゲーム機150台設置した大型店舗の展開を進めています。
街角アミューズメント施設の拡大の波に乗って、急成長している企業もあります。「GiGO」を展開するGENDA(9166)で、2023年7月上場のグロース銘柄です。「GiGO」と聞いてもピンと来ない人でも「SEGA」と聞くと、ゲームセンターを思い浮かべるのではないでしょうか? 実はGENDAは、ゲームセンターやカラオケなどエンタメ系の会社を買収し、急スピードで拡大している企業で、2022年にゲーム業界の大手・セガエンターテイメントを完全子会社化しています。行動指針として、「Speed is King」を掲げており、まさに納得です。
イオン内のゲームセンターを運営するイオンファンタジー(4343)も業績好調です。こちらは、イオンという幅広い年代を取り込む施設内にあることから、平日の午前中は年配のお客さんが多いそうです。コインゲームなど、シンプルなゲームを楽しみながら、交流を楽しむ場にもなっており、高齢化社会においてまさに重要なインフラと言えそうです。
DDグループ(3073)は、ダーツやシミュレーションゴルフ、ビリヤードなどを楽しみつつ、お酒や食事を楽しめる「バグース」を展開しています。コロナ中、若者の間でゴルフ人気が高まりましたが、その後も引き続き堅調で、ゴルフ場まではいけないけれど、仕事終わりにゴルフを楽しみたいというニーズを取り込んでいます。

まとめ

このように、「街角アミューズメント」といわれるサービスをあちこちで見かけるようになりました。うがった見方をすれば、円安で海外旅行に行きづらくなったため、近場で日常を楽しみたいという人が増えているのかもしれません。いずれにしろ投資テーマとしては、とてもおもしろいですね。みなさんのご近所にあるアミューズメント施設を投資家目線でパトロールしてみてはいかがでしょう?
※本記事に掲載されている全ての情報は、2024年5月16日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。
これまでの連載はこちら!
憧れのヌン活は株主優待を使ってお得に!【投資スイッチ! #01】
コロナショックをバネに! 2023年投資テーマは「復活力」【投資スイッチ! #02】
「国策に売りなし!」2023年投資テーマを四季報で見つけよう!【投資スイッチ! #03】
「縦読み漫画」が来てる!四季報で感じる業界変化【投資スイッチ #04】
誰にでも接点があるはず!スポーツビジネスを投資の入り口に【投資スイッチ#05】
新たなマス世代ビジネスの誕生か?? 四季報春号で見つけた投資の種【投資スイッチ #06】
肌で感じるリオープン景気! 今後の明暗を分ける決め手は?【投資スイッチ #07】
デフレ脱却は株式投資のはじめどき!値上げに惑わされない経済の見方【投資スイッチ #08】
初心者さんでも簡単に見つかる!四季報夏号で上昇修正を先回りする裏技【投資スイッチ #09】
100年に一度の大変革! EV化の波に個人投資家が乗るよろこび【投資スイッチ #10】
“節約志向”がキーワード!? 2023年秋の夜長を四季報で楽しもう【投資スイッチ #11】
保険加入はもはや常識!?家族化が進むペット市場の現状と注目企業【投資スイッチ #12】
「ほぼ日手帳」が海外でも人気! 投資家目線で「ほぼ日」を評価するなら…【投資スイッチ #13】
インフレ・円安で「高級ブランド品」の需要増!? 好調リユース業界の勝ち組を見分けるポイント【投資スイッチ! #14】
お宝銘柄を発見するには?四季報「新春号」で注目すべきポイント【投資スイッチ! #15】
なぜ人気?高配当株投資の魅力と注意点【投資スイッチ! #16】
スノーピーク株・夢と絶望のアウトドアブーム:投資家が学ぶべき教訓【投資スイッチ! #17】
四季報春号のお宝銘柄をスピードチェック!「月足ぴょこ」チェック【投資スイッチ! #18】

RELATED

>