本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
Introduction
先日、ゴルフ場へ向かう車内で「あったかくなったのはいいけど、花粉がきついよね」という話題でひとしきり盛り上がりました。じつはわたしは、花粉症じゃないのですが、それをいうと、逆に驚かれる始末。今や、花粉症じゃない人のほうがマイノリティのようです。実際、わたしの娘はふたりとも花粉症で、この季節は、「くしゃみが止まらない」「目がかゆい」「鼻水が……」と、つらい症状に悩まされています。下の娘においては、ちょうど受験の日に「目が痒い」が始まり、ヒヤヒヤしたものです。
昨年1月にウェザーニューズが行った花粉症対策調査結果では、2人に1人以上が花粉症で、発症率が高いのは1位 山梨県、2位 静岡県、3位 埼玉県でした。ゴルフ場が多い場所なので、ゴルファーの嘆きが聞こえるようです。また、「花粉飛散予想2025」では、2025年の春は花粉の飛散量が多く、関東・山梨エリアでは2024年と比べて142%、通年と比べて155%になると予想しています。
こうなると花粉による被害は、笑えるレベルではありません。政府広報オンラインでは、花粉症による生産性の低下は、1日当たり2,215億円の経済的損失を招くという試算をしており、本気の対策が必要とされています。
さて、この憎き花粉ですが、せっかくならば、投資に活かさないわけにはいきません。この時期、マスクや目薬、空気清浄機などの対策グッズが飛ぶように売れ、薬局の棚からはアレルギー薬が姿を消すこともしばしば。まさに「花粉症ビジネス」が活況を迎えるタイミングです。
実は、こうした季節特有のニーズに応じて売上が伸びる企業や業界は、株式市場でも注目されています。投資の世界では「シーズンストック」と呼ばれ、花粉症の春、猛暑の夏、インフルエンザの冬……と、季節ごとのテーマに沿って動く銘柄に目をつけるのも、ひとつの投資戦略。今回は、「花粉症」という春のトレンドにフォーカスし、この季節ならではの注目企業や業界の動きを読み解きましょう。
花粉症関連ビジネスの市場規模とトレンド
まず市場規模について見てみましょう。
厚生労働省の調査によると、日本国内で花粉症を含むアレルギー性鼻炎の有病率は年々増加傾向にあり、特にスギ花粉症の患者数は急増しています。これに伴い、花粉症対策グッズや医薬品の需要も拡大。民間調査によれば、国内の花粉症対策市場は、関連商品やサービスを合わせると年間約3,000億円規模に達していると言われています。
・医薬品市場では、ドラッグストアで購入できるOTC(一般用医薬品)の抗アレルギー薬が主力。特に「アレグラFX」や「アレジオン」などの売れ行きは好調で、春先は棚から消えるほどの人気です。
・マスク市場はコロナ禍を経て高機能化が進み、ユニ・チャームなどが展開する「超立体」「超快適」といった商品は、花粉を99%以上カットする機能をアピールし販売数を伸ばしています。
・空気清浄機や加湿器も定番商品で、ダイキンやシャープ、アイリスオーヤマといったメーカーが「花粉モード」などを搭載したモデルを投入。室内環境の改善需要に応えています。
さらに近年では、舌下免疫療法やレーザー治療など、根本的な治療を目指す医療サービスの拡大も顕著です。こうした医療機関の需要を取り込む動きが進んでおり、治療法の多様化とともに市場の裾野が広がっています。
一方で、スギ花粉そのものを減らす取り組みも注目されています。東京都は「花粉の少ない森づくり」を掲げ、スギの伐採や低花粉品種の植え替えを進めています。これに関連する林業や苗木生産、さらには環境ビジネスの分野にも新たな商機が生まれつつあります。
気象庁や民間気象会社による花粉飛散予測サービスの高度化も進んでおり、これを活用した企業のマーケティング活動も活発化。オンラインショップでは「花粉症対策グッズ特集」が組まれ、消費者へのアプローチも年々早まる傾向にあります。
このように、花粉症対策ビジネスは、製品・サービスの多様化や高付加価値化に伴い、今後も成長が期待される分野です。
注目したい花粉症関連の企業は?
春は、新たな生活の始まりとともに、花粉症に悩まされる季節でもあります。しかし、この“悩み”が、経済においては大きな“ビジネスチャンス”となっていることを知ると、少し見方が変わるかもしれません。ここでは注目したい花粉症関連の企業をいくつかピックアップしました。
鳥居薬品(4551)・・・スギ花粉症の根本的な治療を目指す舌下免疫療法(スギ花粉症のアレルゲン免疫療法)に使われる「シダキュア スギ花粉舌下錠」を発売。
通常の抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬など)が「症状を抑える」のに対し、シダキュアはアレルギー反応を起こしにくい体質にすることを目指す治療法です。効果が出るまで数ヶ月~1年ほどかかることが多いですが、継続することで花粉症の症状緩和や根治が期待されるので、継続的な服用が見込まれます。
四季報新春号の記事欄には「スギ花粉症薬『シダキュア』生産増急ぐ」とあり、需要旺盛であることがわかります。
ロート製薬(4527)・・・花粉症対策では「アルガード」シリーズで、目の痒みに対応する目薬、鼻水・鼻詰まりに対応する内服薬・スプレー、花粉を洗い流す洗浄シリーズなどを展開しています。
ジンズホールディングス(3046)・・・ご存知メガネブランドJINSですが、今年1月にJINS史上最強の花粉カット率99%以上を実現した花粉・飛沫・乾燥対策メガネ「JINS PROTECT」を発売しました。
顔とフレームの隙間を減らすフード形状により、花粉を最大99%以上カットする高い防御性能を持つ定番モデルのほか、目の周りの潤いを裸眼時と比べ約20%アップさせることで、乾燥対策も可能なモデル、メガネとしての自然な見た目を追求しつつ、花粉や飛沫の侵入を防ぐ機能を備えたデザイン性重視のモデル、子供の顔のサイズに合わせたキッズ用まで幅広く展開。
一昨年は、春花粉の飛散シーズンである2023年2月6日~3月26日の販売本数が計画比169%と爆売れしましたので、今年も期待できそうです。
ダイキン(6367)・・・ダイキン独自の技術である「ストリーマ」を搭載した空気清浄機、エアコン、加湿器が人気。
「ストリーマ」は、ダイキン工業が独自に開発した空気清浄技術の一つで、正式には「ストリーマ放電」と呼ばれます。ストリーマを搭載することにより、花粉を単にフィルターで捕集するだけでなく、花粉に含まれる「アレルゲン(アレルギー物質)」そのものを分解・無害化。単なるフィルター清掃を超えた次世代型の空気清浄技術と言えます。
ウェザーニューズ(4825)・・・花粉症の人には、ぜひ利用してほしい気象情報サービス。今日明日(1時間ごと)、7日先までの花粉飛散予報を確認できるので、お出かけの予定や、着る服の対策に役立ちます。
辛い花粉症も投資のヒントに
株式市場でも、花粉症対策を行う企業や、季節ごとのニーズに対応した「シーズンストック」は、安定的な収益源として注目されています。医薬品や家電、日用品だけでなく、環境や医療サービスまで広がる花粉症関連ビジネスは、投資の視点でもチェックしておきたい分野です。
季節の移り変わりとともに訪れるこうしたテーマは、生活に密着しているからこそ、ビジネスや投資のヒントにもつながります。ぜひ春の花粉症対策をきっかけに、季節を意識した投資戦略を考えてみてはいかがでしょう。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2025年3月12日時点の情報に基づきます。
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