株式

2025.02.25

「投資は失敗しながら覚えるもの」桶井道さんに聞く成功のコツ【投資家インタビュー】

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多くのメディアで発信を行う経験豊富な投資家の方々でも、時には投資で失敗することもあります。しかし、失敗で得た学びを糧に投資を続けたことで今の成功があるのではないでしょうか。今回は、投資歴26年の個人投資家・桶井道(おけいどん)さんの失敗経験についてお話を伺いました。

今回お話を伺ったのは…

桶井道(おけいどん)さん

桶井道(おけいどん)さん

個人投資家(投資歴26年)・物書き(単行本5冊出版)。世界の高配当株、増配株、ETF、リート、投資信託など幅広く100銘柄以上保有する。いずれへの投資も、時間も労力もなるべく使わない「ゆとりある投資」を実践している。
2020年に47歳で資産1億円+年間配当(手取り・以下同)120万円とともに25年間勤務した会社を退職して自由になる。それから4年で資産1.8億円+年間配当250万円まで成長させる。現在は、両親の介護・見守りをしつつ、単行本や連載などを通じて投資に関する情報を発信している。
著書は、『資産1.8億円+年間配当金(手取り)240万円を実現! おけいどん式「高配当株・増配株」ぐうたら投資大全』(PHP研究所)https://amzn.asia/d/fYIM91S 、『普通の人のための投資:いちばん手軽で怖くない「ゆとり投資」入門』(東洋経済新報社)https://amzn.asia/d/3HatCqu 、など5冊。
X(旧Twitter)アカウント(@okeydon)はフォロワー8万人。(プロフィールイラスト=西田ヒロコ)

基本スタイルは、長期ホールド前提の「ぐうたら投資」

──桶井道さんが投資を始めたきっかけは?
桶井:両親が株式投資をする姿を、学生時代から目の当たりにしていました。当時は、四半期ごとに会社四季報で優良企業を探したり、毎朝新聞で株価を確認したり、株の売買注文を固定電話から口頭で発注したり、すべてがアナログで、そんな両親の背中を見て過ごしました。「大人になったら株式投資するのは普通」という環境で育ったため、私にとって投資はとても身近なものでした。
小さい頃から身体が弱くて小中高と欠席日数が二桁ありました。大学に進学してから体調が好転して、社会人として問題なく働けるようになったものの、いつ身体を悪くして働けなくなるか分からないという想いから、投資を始めることにしました。自分がフルで働けなくなっても分身(=投資)が自分を助けてくれるだろうと思ったのです。
──現在の投資に対するスタンスや投資スタイルについて教えてください。
桶井:日本株、東証ETF、米国株、米国ETF、米国以外の外国株、米国リート、シンガポールリート、豪州リート、投資信託、日本の個人向け国債と幅広く100銘柄以上保有する超分散投資をしています。
メインの考え方は、世界の「高配当株、増配株、ETF、リート」に長期投資、分散投資をして配当金・分配金を得るスタイルです。いったん投資すると、最低限のメンテナンス(本決算の確認、中期経営計画の確認、単独暴落した場合の原因調査)だけして長期ホールドします(下位銘柄については本決算や中期経営計画をあまり見ていません)。売買してキャピタルゲインは取りに行きません。長期ホールドしながら、増配と含み益との両方を狙う「ぐうたら投資」です。
NISA口座のつみたて投資枠では、S&P500に投資する投資信託へのつみたて投資をしています。成長投資枠では、日本の高配当株に投資しています。その他、多くを特定口座にて運用しています。
配当金実績:2020年退職時120万円(手取り・以下同様)、2024年250万円、2033年60歳での配当金最大化を目指しています。

感情的な投資判断の結果、ファーストクラス1回分の損失!

──これまでの投資活動の中で印象的だった失敗経験について教えてください。
桶井:まず一番に思いつくのは、投資歴8年くらいのときの出来事で、旧・日本航空に、ろくに銘柄分析もせず投資したことです。旅行でよく使う企業で、良い思い出があり好きだからという理由で投資しました。そして、決算確認などメンテナンスを一切しませんでした。自分が株主でいることを誇りに思い、株主であることに酔っていたのです。感情的な面も影響して損切りのタイミングを逃してしまいましたね。
結果、経営状態が悪化して上場廃止。上場廃止の前に損切りしましたが、200~300万円を投資して、ほぼ半額に…。ファーストクラスの1回分くらいの損失を出してしまいました。悪酔いもいいところです。
──その失敗から学んだこと、今の投資活動に活かされていることはありますか?
桶井:ユーザーとして良い商品、良いサービス、良い企業と肌で感じたとしても、業界分析、ファンダメンタルズ分析、事業分析などはしなくてはならないということです。まして、個人的にいい思い出があるだけで投資対象にしてはいけないと学びました。
この経験があったからこそ、感情に頼った判断をすることなく決算情報の確認や分析を行うことを意識しています。同じように、ザ・リッツ・カールトンが好きで、親会社のマリオット・インターナショナルに投資しましたが、そのときは分析しました。結果、株価は6年ほどで2倍(日本円換算2.7倍)になっています。

外国の小型成長株投資は、1年も持たずに赤字撤退…

──ほかにも、現在の投資スタイルを確立する上で学びにつながった失敗があれば教えてください。
桶井:もう一つの印象的だった失敗は、数年前の出来事です。外国の小型成長株に数銘柄投資するも、大半が1年も持たずに赤字撤退(=損切り)。どんくさい私には機動性が求められる投資は向いていませんでした。ただし、各10万円程度ずつと少額投資に留めていたので深い傷を負わなかったことがせめてもの救いでしたね。
このときに、自分はやはりどんくさい性格だと実感し、機動性が求められる投資はやめようと思いました。また、新しい投資に挑戦するときは少額に留めて、向き不向きを見極める大切さを改めて学びました。
今では、自分のどんくささを忘れることなく、短期売買は絶対にしないと決めています。プロを相手に短期売買で勝負を挑んでも勝てないことを十分に理解しましたから。よって、GDP、雇用統計、消費者物価指数など経済指標は学びません。それらは長期投資には役に立たないため、無駄な勉強はしない、リソースの無駄遣いはしません。リソースに対する効果を考えるようにしています。

得意分野に集中することがスキル・成績を伸ばすカギになる

──「どんくさい」とおっしゃっていますが、ご自身の性格や得意/不得意といった性質に関する失敗をどのように克服されていますか?
桶井:不得意なことは不得意と、自分の弱さを認めることです。そこを克服しようとしないことが大事と認識しています。そこに挑んでも時間を要する割に効果は薄いでしょう。自分の得意に集中するほうが、楽しく学べますし、楽しく行動できますので、スキルも成績も伸びると思います。大人になってから苦手を克服する必要はあまりないと思いますよ。
私自身、「失敗は失敗」と認めて、同じ失敗を二度としないように心がけています。なぜ失敗したのか反省・分析して、次は同じ失敗を繰り返さないようにできるのか、それとも苦手だから二度と手を出さないのかを決めるということが大切です。

投資は失敗しながら覚えるもの、失敗を想定したチャレンジをしてみよう!

──投資を始めたい、もっとレベルアップしたい投資初心者に向けたメッセージをお願いします。
桶井:投資を始めたいと思っている方は、投資信託やNISAに関連する本を2-3冊読んだら、すぐにでも投資を始めてください。今の時代、S&P500やオール・カントリーといった優良な指数に投資できる投資信託がありますし、ネット証券で口座を開けば、スマホでポチるだけで投資ができてしまいます。新NISAなら完全非課税・永久非課税です(ただし、外国に投資するタイプは、海外での税金が掛かります)。とても良い時代になりました。
もっと知識をつけてから投資しようと先延ばしするのは悪手です。損していないようで機会ロスという損をしています。料理を始めるのに料理本100冊読んだところで上達しません。実際に作って、塩加減や焼き加減を失敗しながら覚えていくものです。投資も同じで、投資本をもっとたくさん読んでから投資しようとか思っていると、いつまでも投資を始められませんし、投資しないと上達もしません。投資をやってみて初めて分かる部分は意外と多いのです。
NISAのつみたて投資枠での投資は、投資信託へのつみたて投資ですので、いったん自動購入の設定さえすれば、毎月投資に使う時間はゼロ~数分のみ。退屈すぎるほどです。ゆえに、投資を難しく考えないでください。
レベルアップするために、新しい投資を始める際は必ず少額からにしてください。たとえば、投資信託へのつみたて投資をしている人が個別株へ進出する場合、失敗してもいい額に留めましょう。取り返しのつかない額で失敗すると、再起に時間を要しますし、「投資は危ないからやめてしまおう」となりかねません。
レベルアップを求めるなかで失敗することはきっとあります。しかし、早い段階での失敗はむしろコスパの良い学びになります。新しい投資の際に少額を勧める理由はそこにもあります。
投資活動でPTSを活用するヒント!

今回お話を伺った桶井さんの「ぐうたら投資」は、いったん投資をしたら最低限のメンテナンス長期ホールドする方法をとります。「ぐうたら」とはいえ、投資をするなら株の値動きに敏感でいることは重要です。桶井さんもPTS(私設取引システム)を活用して夜間の値動きをチェックしていることもあるそうです。

これから投資を始めたい、レベルアップしたいと考えている方は、PTSを活用して投資のチャンスを広げてみましょう!
※本記事に掲載されている全ての情報は、2025年1月31日時点の情報に基づきます。
※あくまでも桶井道さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。

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