株式

2024.08.27

本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

キリオフィス代表、株式投資スクール講師、CFPファイナンシャルプランナー。個人投資家として2010年より株式投資をはじめ、5年で資産を10倍に増やす。数字オンチの人も含め普通の人が趣味として楽しめる株式投資を広めるため、講師、講演者、パーソナルトレーナーとして活動中。講座は特に女性に人気で、毎回キャンセル待ちが出るほど。著書に「月収15万円からの株入門 数字オンチのわたしが5年で資産を10倍にした方法」「ド文系女子の株の達人が教える 世界一楽しい!会社四季報の読み方」(https://www.amazon.co.jp/dp/B09PB1FT8H/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1)など。
YouTube:藤川里絵の女子株CH『はじめの一歩』 - YouTube(https://www.youtube.com/channel/UCrsiRmd8Bq7CmaXljd8PDKw

Introduction

9月は、ざっくり400社近くの企業が株主優待を行います。これは3月に続いて多く、優待好きの投資家にとっては、たまらなく胸踊る時期です。ここのところ株式市場はボラティリティが高く、値上がり益目的の投資は難易度が高くなっていますが、優待目的であれば、比較的心の中は平和でいられます。短期的に値下がりしても、慌てて売ってしまうということも避けられます。この波乱を機に、優待株投資にハンドルを切り替えようと思った人もいるかもしれません。
わたし自身も何社か優待目的で長期保有しており、たしかにこの波乱でも優待銘柄の値動きはまったく気になりませんでした。これを機会にもう少し優待銘柄を増やそうと思っています。

9月に注目の株主優待企業5選

9月権利付優待銘柄で個人的に触手を伸ばしたい銘柄を厳選して5つ紹介します。あえて人気の航空会社やクオカード、カタログギフト以外で「オッ」っと心惹かれたものをピックアップしています。
・平和(6412)
パチンコ、パチスロ機のメーカーですが、傘下のゴルフ場大手のPGMを有しています。そのため、株主優待は、ゴルフ場のプレー料金割引券がもらえます。200株以上で1,000円割引券が2枚、300株以上で3枚と100株増えるごとに1枚増えて、800株以上になると8枚になります。ゴルフ好きにはたまらないですね。
・タカノ(7885)
事務用いすのOEMと電子デバイス装置が2大柱。
本社が長野県にあるため、長野にちなんだ優待品がもらえます。100株以上で、1,000円相当の自社オリジナル商品(赤そば蜂蜜ラスクセット)、1,000株以上で、3,000〜5,000円相当の長野県にちなんだ特産品(ワイン・りんごなど)。蜂蜜は、1個あるとお砂糖代わりに使えて便利です。自分で買うにはちょっとお高いので、ちゃっかり優待でゲットしたい。
・ツムラ(4540)
ご存知、漢方薬では国内シェア1位の医薬品会社。100株以上で、ツムラのくすり湯バスハーブ210ml、また3年以上継続保有の株主なら、抽選で自社漢方記念館見学会に招待してもらえます。
・ベルーナ(9997)
アパレル、グルメを扱う通販大手。100株以上で2,000円相当の自社グループ運営の飲食店や連携ホテルの優待券をもらえます。おすすめは、黒毛和牛のステーキ店「銀座のステーキ」です。優待券はディナーのみに使えます。霜降りのA5和牛を目の前で焼いてくれて、時間内ならなんと食べ放題! この日ばかりは値段を気にせずお肉にがっつきたいですね。
・ヒロセ通商(7185)
外国為替証拠金取引大手。100株保有で10,000円相当の食品詰め合わせがもらえます。パスタソースやレトルトカレーなど、かなり充実した商品群で災害時の備蓄にも役立ちそうです。
意図的ではないですが、やっぱり食品関係が多くなりました。値上げ値上げで節約志向が高まる中、優待で食料品や優待券が届くとちょっとあったかい気持ちになりますね。

優待を受け取る際の注意点

株主優待は、その名のとおり株主であれば貰えるものですが、株主であるタイミングがずれると優待をもらえないことがあるので要注意です。9月が優待月の場合、権利付最終日の9月26日に株を持っていればもらえます。言い方を変えると、その日さえ株をもっていれば優待の権利がもらえますので、翌日には株を売却しても構いません。
人気の優待銘柄は、権利付最終日に向けて株価が上昇する傾向にありますので、少し早めに株を購入しておいたほうがよいかもしれません。ただし、長期保有が前提の株主優待もありますので、その点は、会社のホームページなどでしっかり確認しておきましょう。

優待株投資でも業績はかならずチェックしよう

いくら株主優待が目的でも、業績が悪化傾向にある株は避けたほうが無難です。優待品を貰って得した気分でいても、株価が大きく下がれば、それ以上に損をすることになります。業績が悪化している企業は、事業の効率化をはかるため、優待を廃止にする可能性も高くなります。優待目的で保有していたのに、優待が廃止になってしまえば元も子もありません。利益がしっかり出ているか、財務はぐらついてないか、きちんと確認しましょう。すでに保有している株でも、業績に不安がある場合は、手放すことも選択肢に入れること。

ほんとにお得?

優待品はタダでもらえるような感覚に陥り、なんでもかんでもお得に感じてしまいます。しかし、冷静に考えれば普通に買ったほうがよいのでは?と思う場合も。お得かどうかを確認するには、優待利回りを計算します。優待利回りは、優待品の金額÷(株価×100)÷100で計算されます。
たとえばヒロセ通商の優待利回りは、10,000円÷(3,815円×100)÷100= 2.6%です(※8月14日の終値)。
優待利回りが1%を割ってしまう場合は、それほどお得とは言えません。普通にその商品を買ったほうが、株価の値下がりリスクを取らなくていい分、健全です。
また、優待券に利用期限がある場合、うっかり期限を切らしてしまうこともあります。近くに利用できるお店がないと忘れがちなので、とくに要注意です。優待券が届いたら、使用期限を確認し、忘れないようカレンダーなどに記入しておきましょう。

優待を受け取る際の注意点

株主優待は、株主還元のひとつでもありますが、一方で、公正性に欠けるとも言われています。というのは、海外投資家など、海外の株主にとっては、日本でしか使えない株主優待券をもらっても嬉しくもなんともないからです。また、機関投資家などは、大量に送られてくる優待品の処分に困る場合もあります。優待品を郵送するには送料や人件費もかかりますから、その分を配当に回してほしいという意見もあります。そのため、優待廃止を発表する企業が、チラホラ出てきています。直近だと、7月10日に発表したサイゼリヤが記憶に新しいところです。やはり優待廃止の理由は「株主の皆様に対する公平な利益還元の観点」でした。
飲食や食品関係の企業は、自社製品のファンでいて欲しいという目的もあり、株主優待は廃止されにくいという認識がありましたが、最近は、そういった企業も廃止することがありますので、油断できません。
株主の中で、海外投資家や機関投資家の占める割合が大きい企業は、突然の優待廃止もありえますので気をつけてください。

実は新たに優待を導入する企業も

廃止する企業がある一方で、新たに優待を導入する企業もそれなりにあります。その背景には、東京証券取引所による市場区分の見直しに関するフォローアップ会議の存在があります。「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」と題し、各企業に対して株価の上昇を促しています。株価を上昇するための作戦のひとつとして、株主優待を導入し、個人投資家を獲得したいという思惑が働いているようです。時価総額1,000億円以下の小さい企業にその傾向が強く、実際に優待を導入した企業のその後の株価動向は比較的堅調です。保有銘柄が、いきなり優待導入!というラッキーなこともあるかもしれません。

もし優待が廃止になったら?

優待目的で株を購入したのに、廃止になってしまったら手放したほうがよいかどうか問題ですが、この答えは、廃止の理由によります。業績悪化が廃止の理由なら、速攻手放すべきです。そのまま保有していると、ずるずると株価が下がって、ダメージが大きくなってしまう可能性があります。
しかし、サイゼリヤのように、公平な利益還元が目的で、優待廃止分を配当で補うということであれば、そのまま保有しておいてもよいかもしれません。実際、過去の事例を見ると、優待廃止で短期的に株価は下落するものの、その後買い戻されて、優待廃止前よりも株価が上昇している銘柄はたくさんあります。とくにNISA口座で保有している場合は、今後は配当目的として長期保有するのも一案です。
今回紹介したのは9月の優待銘柄なので、実際に優待品が届くのは11月から12月くらいになります。忘れたころに届くので、ちょっとしたサプライズプレゼントを貰う気分です。この気持ちは、実際に優待を受け取ってみないと分からないかもしれませんね。ぜひトライしてみてください。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2024年8月19日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。
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