夜間取引

2024.09.18

今回お話を伺ったのは…

森口亮(もりぐち まこと)さん

森口亮(もりぐち まこと)さん

個人投資家、投資系YouTuber。1983年、埼玉県生まれ。元美容師。「Excelで決算数値を管理して、有望な成長株を中・長期的に狙う」という手法で資産を10倍に。その後も着実に資産を増やしている。著書に『1日5分の分析から月13万円を稼ぐExcel株投資』(KADOKAWA)がある。YouTube「毎日チャート分析ちゃんねる」やnote(https://note.com/morip)を日々更新中。

チャンスを広げるための投資戦略

株式投資は、一般的に利益を出すのが難しいとされています。それはプロとアマチュアが同じ土俵で戦わなければならず、情報の速さや量、投資にかけられる時間などに大きな差があるためで、個人投資家の8〜9割は負けてしまうというデータもあるようです。
そのような環境でも、個人投資家が株式相場でより多くのチャンスに出会うためには、個人投資家ならではの戦略が重要になります。
その一つの例として、PTSの夜間取引をうまく活用することが挙げられます。これにより、東証の取引時間外でもチャンスを広げ、投資をより有利に進めることが可能です。

夜間取引とは

株式市場は2024年8月現在、朝9時から午後3時までの時間帯に開かれています。しかし、忙しくて日中に取引ができない人や、相場の動きを確認してから取引したい人にとってありがたいのは、取引時間外でも株式を売買できる「PTS(私設取引システム)」です。
PTSとは、私設取引システム(Proprietary Trading System)の略で、 認可を受けた証券会社が、株式などの有価証券の売買を成立させる取引システムのことです。PTSを利用することで投資家は証券取引所を介さずに有価証券を売買することができます。特にジャパンネクスト証券のPTSは、日中の取引時間以外に、夜間市場を運営しているので、通常の取引時間外でも売買ができるため、大引け後に決算などの重要なニュースが発表されたり、海外市場の動きを反映させたりする際には利便性が高いでしょう。
初心者にとって、夜間取引は取引の機会が増える一方で、取引される量が日中と比べて少ないために、注文方法によっては株価が大きく動く可能性がある点に注意が必要です。
メリットとデメリットをしっかりと理解した上で、自分に合った取引方法を選べるようにしましょう。

大引け後、夜間取引でチャンスをつかむには?

夜間取引でチャンスが増える一例としては、保有銘柄が決算発表や個別の材料によって急騰が続いている場合が挙げられます。
日本の株式市場では、前日終値を基準とした制限値幅のルールがあり、その上限に達することをストップ高、下限に達することをストップ安と呼びます。
どんなに良い材料が出ても、当日の取引時間中にストップ高水準を超えることはありませんが、夜間取引では翌営業日の制限値幅が適用されて取引が開始されます。
例えば、好材料が出てストップ高が数日間継続するような銘柄は、短期的な値上がりの直後のため、翌営業日以降は乱高下が起こりやすく、売却のタイミングが非常に難しくなります。しかし、夜間取引を利用し、翌日の制限値幅が適用された状態ならば、さらに値上がりしている状態で取引するチャンスが得られるのです。
このようなチャンスに頻繁に巡り会うことはありませんが、株価が大きく跳ね上がる例は実際に存在しています。
最近の例では、プレシジョン・システム・サイエンス(7707)という銘柄があります。この企業は、独自技術のDNA抽出装置や全自動遺伝子診断システムに強みを持っており、8月14日にはアフリカで流行しているウイルス感染症「エムポックス(サル痘)」に関して、世界保健機関(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した際に株価の上昇が見られました。
同社はエムポックスウイルスのPCR検査キットを販売した実績があり、このニュースを受けて翌日から買いが集中し、株価が上昇を続け、8月23日(金)に改めてストップ高水準で、特別買い気配のまま取引を終えました。

(SBI証券より 8月23日終値 ストップ高で終了)

通常であれば、土日を挟んで月曜日まで取引を待つ必要がありますが、この短期間での大きな上昇と当日のストップ高により注目を集めていた同社は、当日の夜間取引で、さらに17%以上の上昇が見られました。

(SBI証券より 8月23日の夜間取引終値 売買代金はやはり少ない)

このように、翌営業日の制限値幅が適用される夜間取引をうまく活用することで、より高い価格で利益確定のチャンスを広げることが可能になります。
ただし、このような銘柄であっても、取引量は日中取引に比べて少ないことが多く、気配情報を正確に把握した上で取引する必要があります。
気配情報とは、市場に出ている指値注文の状況を示す表であり、売買注文を出す際のヒントになる情報です。

(SBI証券より Hamee:3134 の気配情報)

現在の株価がそのまま取引可能な価格とは限りません。例えば、現在の株価が1,000円の銘柄を1,000円で買いたい場合でも、その価格で売りたい投資家がいなければ取引は成立しません。
だからこそ、気配情報を見て、自分の希望する価格に売り注文や買い注文が入っているかを確認し、自分の注文方法や指値の価格を調整する必要があります。特に日中に比べ、取引量の少ない夜間取引では、この確認作業がとても重要になります。
もし価格を指定しない成行注文を入れた場合、現在の指値注文の中で最も有利な価格で約定することにはなりますが、前述しているように夜間取引では取引量日中に比べて少ないため、思った価格とはズレてしまう可能性が高いために注意が必要です。

蟻地獄のように網を張って待つ「指値戦略」

前述の例では、保有銘柄の売りを対象に夜間取引の活用を考えましたが、「買い」についても同様にチャンスを広げることができると思います。それが、「さすがにこの価格は安すぎるのでは?」と思える価格に指値を入れ続ける戦略です。私はこれを「蟻地獄戦略」と呼んでいます。
先に説明した通り、株価は直近の売買の成立によって決まりますが、夜間取引では取引量が少ないため、価格が大きくぶれることがあります。このぶれを逆手に取ることで、自分がよく知る銘柄が予想外の安値をつけるタイミングを捉えるチャンスが稀にあるのです。
この戦略は、あくまでも自分で分析し、よく理解している銘柄が前提となります。一定の成長性や強みを持つ独自性のある銘柄に対して、「いくらなんでも安すぎる」と思える価格を自分で計算できる場合に限られます。
もちろん、そう簡単に約定することはありませんが、諦めずに毎日、その価格に指値を入れ続けてみてください。そういう意味でも、分析をして納得した銘柄でないと、指値を毎日入れ続けることも難しいですね。
時に、相場は、価値と価格が大きくずれる場合、特に取引量の少ない夜間取引の時間帯には、そのブレが価格に大きく出てしまうことがあります。狙うべきは、株価の本来の価値を無視した相場の歪みによる一時的な下落です。
まるで蟻地獄のように、その価格に達するのをじっと待ち続けることで、リスクを低減した取引が可能になります。待ち続けるといっても、指値注文さえ入れておけば、後はその価格まで下がってきた際に自動で注文が執行されるので難しいことはありません。
根気強く有利な価格での指値を入れておくことは、少ないチャンスをモノにするための有効な戦略の一つです。泥臭く利益を狙っていきましょう。

まとめ

本記事では、夜間取引を活用することで、日中の取引時間に限らず、投資チャンスを広げる戦略について解説しました。保有銘柄の売却タイミングを逃さないための夜間取引活用や、予想外の安値での買い注文を狙う「蟻地獄戦略」など、個人投資家ならではの柔軟なアプローチを紹介しました。
日本で唯一夜間市場を運営しているのは、ジャパンネクスト証券のPTSです。夜間取引をする場合、ジャパンネクスト証券が運営するPTSの夜間市場に接続している証券会社で取引口座を持っている必要があります。大手ネット証券の多くはジャパンネクスト証券PTSに接続していて、夜間取引が可能となっているので、興味のある方は調べてみると良いでしょう。
株式投資は、プロフェッショナルと同じ土俵で戦う難しさがありますが、夜間取引を含む多様な取引手段を活用することで、情報のスピードや投資のタイミングを、より自分へ有利にすることが可能です。これらの戦略は、リスクを低減しつつ、チャンスを広げるための重要な手法です。
投資は常にリスクを伴いますが、その中で自分自身の判断力や柔軟性を磨き続けることで、より良い結果を得ることができます。今回ご紹介した戦略をヒントに、みなさんが投資をする際の参考となり、成功へ繋がることを願っています。
市場は常に変動していますが、その中で自分のスタイルを確立し、前向きに挑戦を続けることが、最終的には大きな成果を生むでしょう。これからの投資活動に、ぜひ積極的に取り組んでください。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2024年8月26日時点の情報に基づきます。
※あくまでも森口亮さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。

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