株式

2024.09.27

今回お話を伺ったのは…

足立武志(あだちたけし)さん

足立武志(あだちたけし)さん

公認会計士・税理士・個人投資家。足立公認会計士事務所代表。株式会社マネーガーディアン代表取締役。一橋大学商学部経営学科卒業。
25年にわたる株式投資の経験をもとに、個人投資家が株式投資・資産運用で成功するために必要な実践的な知識・情報を書籍、セミナー、コラム、ブログ、メルマガ等で精力的に提供。「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」「株を買うなら最低限知っておきたい 株価チャートの教科書」(いずれもダイヤモンド社)はシリーズ累計26万部のベストセラー。楽天証券にて株式投資や税金コラムを14年にわたり連載中。
公式ブログ:https://kabushiki-adachi.com/
登録件数2万件超の無料メールマガジン「上位10%の負けない株式投資」
http://makenaikabushiki.com/lp_mail/

損切りと利益確定とは

今の世の中は情報に溢れています。特に初心者の個人投資家の皆さんからは、株式投資について頑張って色々調べようとすればするほど、様々な情報に振り回されてしまい、結局どうすればよいか分からなくなってしまう、という声をよく聞きます。
そこで筆者が提唱しているのが、株式投資を「シンプルに考えよう」ということです。
実は株式投資は3つの行動の繰り返しでしかありません。
(1)投資する銘柄を選ぶ
(2)投資する銘柄を買う
(3)投資する銘柄を売却する
筆者はセミナー等でよく「八百屋で考えてみよう」という例えで説明しています。
上記の(1)~(3)を八百屋で置き換えてみると、以下のようになります。
(1)売れそうな旬の野菜はなにかを思い浮かべる
(2)その野菜を(できるだけ安く)買う
(3)その野菜を(できるだけ高く)売る
そして、(3)で売却して得たお金で、新たに旬の野菜を仕入れるわけです。このように、八百屋に限らず商売は(1)~(3)の繰り返しで利益を得ていることになります。ですから、株式投資と商売は同じと考えれば分かりやすいと思います。
ところで、夕方過ぎに八百屋に行くと、もともと1山400円だったトマトが半額の200円になっているのを見かけます。このトマト、もし200円で仕入れてきたのであれば、200円で売ってしまったら利益になりません。
さらに、閉店間際になると、さらに値引きされ、トマトが100円になっていたりします。200円で仕入れたトマトを100円で売ったら赤字です。ではなぜ、200円で仕入れたトマトを100円で売るのでしょうか?
それは、損をしてでも売らなければ、腐って価値がゼロになってしまうからです。ゼロになるよりは100円であっても売ったほうがよいことは、お分かりいただけると思います。これが、株式投資でいう「損切り」なのです。
先ほど、株式投資は3つの行動の繰り返しでしかないとお話ししました。
(1)投資する銘柄を選ぶ
(2)投資する銘柄を買う
(3)投資する銘柄を売却する
そして(3)の投資する銘柄を売却するというのは、実は「利益確定」による売却と「損切り」による売却の2つがある。これが重要なポイントです。
八百屋の例で言えば、200円で仕入れたトマトを400円で売れば利益確定ですし、100円で売れば損切りです。
このように商売において利益確定と損切りは、両方ともとても大事なことで、株式投資の世界でも同じことがいえるのです。しかし、商売の世界では当たり前の「損切り」が、株式投資の世界では多くの個人投資家が損切りできずにいるのも事実です。 

株を売却する適切なタイミング

皆さんは、株を売却する適切なタイミングはいつだと思いますか?
実は、これには明確な正解はありません。筆者も含めて、個人投資家が1人ひとりルールを決めて、それに基づき売却のタイミングを計っています。
例えば、長期保有を信条として「買ったら基本は売らない」というスタンスの人もいます。また、ファンダメンタルを最重視し、好業績を理由に買った株であれば「業績の悪化が判明したら売る」という考え方の個人投資家もいます。
ただ、「買ったら基本は売らない」というスタンスだと、買った株が大きく上昇すればよいですが、見込み違いの株を買ってしまい株価が大きく下落した場合は、塩漬け株を作ることになってしまいます。
また、「業績の悪化が判明したら売る」という方法だと、個人投資家が業績悪化を知った頃には、プロ投資家はほぼ売り終わっていて株価も大きく下げてしまっている、というケースがとても多いです。これでは大きな損失や含み損を抱えてしまうことになり、得策ではありません。
他方、いつ売るかというルールを持っていない個人投資家も多いです。このような場合、例えば株価が買値から10%、20%程度上がったら、「これ以上保有したら株価が下がって利益がなくなってしまうかもしれない」と無意識のうちに考え、利益確定売りをする、といったような行動をしてしまいます。しかし、得てしてその後に株価が大きく上昇して悔しい思いをするものです。
逆に株価が買値から下がったときは、損切りのルールを決めていないため、そのまま持ち続けてしまい、塩漬け株になってしまうケースもかなり多いです。
筆者が目指しているのは、「利益はできるだけ伸ばし、損失はできるだけ小さくする」ことです。そのためにはやはり売却のルールが必要ですし、かつ上で述べたような方法の欠点をカバーできる方法が望ましいです。
そう考えて筆者が実行しているルールが、「25日移動平均線ルール」です。株価が上昇を続けている間は、25日移動平均線を上回って推移します。ですから、25日移動平均線を超えている間は保有をし続け、割り込んだら売却することで、利益を伸ばしつつ、しっかりと利益確定をすることができます。
また、買った株の株価が下落してしまったときも、25日移動平均線を割り込んだら売却することにより、損切りとなった場合でも小さな損失で済ませることができるのです。
例えば下記の神戸物産(3038)のチャートをみると、6月下旬に25日移動平均線(紫色の線)を超えた後は株価がずっと上昇していますから、この間は保有を続けることで利益を伸ばすことができます。
出所:SBI証券
また、以下のレーザーテック(6920)のチャートをみると、6月初めに25日移動平均線を割り込んでいます。その後株価が半値以下に急落していますが、25日移動平均線割れで売却しておけば、急落を回避することができたのです。
出所:SBI証券

損切り貧乏に陥らないためのポイント

「損切り貧乏」という言葉を聞いたことはありますでしょうか。これは、損切りの回数が多すぎて、小さな損失が積み重なり、大きな損失になってしまうことを言います。
筆者は、「塩漬け」状態になるよりも、「損切り貧乏」のほうがはるかにましだと思います。塩漬け株ばかりになると、全く身動きが取れず、塩漬け株に投資した資金も死に金となり、後は株価が上がるのを祈るだけ、という悲惨な状況になってしまいます。
「損切り貧乏」は確かに損失が膨らんでしまいますが、損切りすることにより手元にキャッシュが残りますから、これを使ってより有望な銘柄に投資することができます。何も身動きが取れない「塩漬け」状態よりも、有利な状況にあることは間違いありません。
ですから「損切り貧乏」に苦しんでいる方は、損切りそのものは継続しつつ、損切り貧乏にならないような対応策を取ればよいのです。
「損切り貧乏」になりがちなパターンとして、次のようなものが挙げられます。
(1)いくらまで下がったら損切りするかを決めておらず、株価が下がったらなんとなく損切りをしている
損切りのルールを決めていないと、株価がちょっと下がっただけで損切りの必要もないのに、不安になり売却してしまいがちです。その結果、余計な損切りが増えてしまいます。
(2)損切り価格がシビアに設定されているので、すぐに損切り価格にヒットしてしまう
例えば買値が10000円、損切り価格9900円、といったように買値のすぐ下に損切り価格を設定すると、ちょっとした株価の動きですぐに損切りになってしまいます。得てしてその後株価が反発して悔しい思いをします。
(3)株価のトレンドが横ばいの株を買うことにより、損切り価格に引っかかってしまう
株価の明確なトレンドが生じていないと、株価が行ったり来たりして、損切り価格に抵触してしまい、損切りを余儀なくされてしまう可能性が高まります。
(4)買うタイミングが遅いため、結果的に買った後株価がすぐ下がり、損切りになってしまう
例えばマーケット全体がかなり上昇して過熱感を帯びているときに新規に買うと、その後すぐ株価が天井を付けて損切りとなってしまう可能性が高まります。
上記のような点に気を付けつつ、「25日移動平均線ルール」を使って、例えば25日移動平均線を3%割り込んだら売却、と言ったルールをご自身で決めておけば、損切り貧乏をできる限り抑えつつ、大きな損失を回避できるのではないかと思います。
また、株式市場の取引時間中のみならず、PTS(私設取引システム)を活用することで、取引時間外であっても利益確定、損切りの売却注文を出すことができます。
取引時間中に売るべきだったのに忘れてしまった……というような場合は、PTSで売却できる可能性もありますから、チェックしてみてはいかがでしょうか。

まとめ

損切りと利益確定はどちらも利益を伸ばし、損失を最小限に抑えるために必要な行為です。しかし明確な売却ルールがなかったり、誤った売却ルールを設定することで大きな失敗に繋がってしまいます。
今回ご紹介した「25日移動平均線ルール」などもご参考にしていただき、損失を膨らませないようにしつつ、利益を大きく伸ばして株式投資の成果をあげていきましょう。そして損切り貧乏にならないための注意点も意識するようにしてくださいね。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2024年9月17日時点の情報に基づきます。
※あくまでも足立武志さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。

RELATED

>