株式

2025.03.25

今回お話を伺ったのは…

はっしゃん(投資家Vtuber)さん

はっしゃん(投資家Vtuber)さん

ITエンジニア兼業投資家として割安成長株に長期投資するスタイルで1億円を達成。現在は独立・起業して「初心者にも持続可能な株式市場の実現」という理念のもと、専門的な金融知識なしで利用できる株式入門サイト「株Biz」を監修・開発。理論株価や月次情報など独自の投資コンテンツを配信する。投資家Vtuberとしてマネー誌、投資メディア、SNSでも活動し、ビジネス著書累計10万部、Twitter(X)フォロワー数9.3万人、YouTubeはっしゃん式投資勉強会チャンネル登録数2.2万人。
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割安成長株とは?

投資家Vtuberのはっしゃんです。今回は初心者でもできる割安成長株の探し方について紹介します。
ところで、割安成長株ってどんな株かをご存じでしょうか?
・割安株:企業価値(株価)が割安に評価されている銘柄
・成長株:企業価値(株価)が高くなることが期待できる銘柄
この2つの要素を満たした株ということは分かりますね。でも、よく考えると、2つの条件を同時に満たすような「お宝株」は、そう簡単には見つからないことが分かると思います。株価の値付けは、人気投票的な面があります。従って、本当に将来が期待される成長株ならば、割安で放置されているはずはなく、むしろ割高になっていることのほうが多いものです。一方で、割安株は成長性に乏しく、人気がないからこそ、割安に放置されています。 
割安株が多い業種の例:地方銀行、自動車部品製造、テレビ放送局
成長株が多い業種の例:デジタルトランスフォーメーション(DX)関連、AI関連、半導体関連
だから、もし成長株にもかかわらず、割安に放置された銘柄があったとすれば、そこには何らか別の理由(リスク)があると考えるべきです。例えば、今はまだ業績好調でも競合となる強力なライバルが登場して、今後は苦戦が予想されるような場合が該当します。

割安成長株の見つけ方

成長株の見つけ方は、比較的単純です。まずは、売上と利益がどんどん成長していく増収増益の銘柄を探すことです。決算書や四季報で業績を確認すると、その銘柄が成長株かどうかを簡単に見分けることができると思います。ただし、過去の成長実績が100%未来の成長を保証してくれるわけではありません。いつか、成長が止まる時が来るかもしれないということは肝に銘じておきましょう。
一方で、割安株の見つけ方は、評価のポイントが多種多様なので、自分のスタンスを確認しておく必要があります。主な割安評価の指標としては、
・収益力に対して割安 (PERやROEなど)
・配当や株主優待に対して割安 (配当や優待の利回り、配当性向など)
・資産価値に対して割安 (PBRなど)
・将来の価値に対して割安 (未来のPERやPBR、ROEを計算して評価する)
などがあります。
配当や優待の場合は、利回りを見ることができますが、収益力や資産価値に対して割安かを判断するには、PERやROE、PBRといった金融の専門家が使用する指標を勉強する必要があります。これらの指標は、決算や株価で常に変動していることから、最新情報にアクセスすることも必要で、初心者には少し難しいかもしれません。
特に決算発表の結果によっては、PERやROE、PBR、配当利回りは大きく変動するので注意してください。中上級者の方では、決算発表日を把握して、業績情報をチェックしている人が多いと思います。そして、決算発表後は、まずPTS市場で株価が動くことが多いので、PTSの上昇率ランキングをチェックすることで市場が評価した銘柄を確認したり、そこから決算内容を調べることもできます。

理論株価を使って割安成長株を探す事例

はっしゃんは初心者の方でも簡単に割安成長株を探せるツールとして「はっしゃん式理論株価」を開発して、「理論株価Web」や「理論株価チャートRoom 」で公開しています。
理論株価は、決算書の財務指標や業績予測から統計的に計算した理論上の株価です。そして、理論株価チャートには6年半(26ファイル)分の決算書データが反映されています。株価と理論株価を比較することで、割安度や成長性が時系列で可視化されて投資の目安になります。ここからは、理論株価を使って割安成長株候補を具体的に紹介していきましょう。
・トヨタ自動車
下の理論株価チャートは<7203>トヨタのものです。チャートの多くの期間でオレンジ色線の理論株価と株価が連動していること(相関度91.5%)が分かります。
また、トヨタの場合、2025年以降は理論株価が上昇しているにもかかわらず、株価が低迷しているのが分かります。ここ1年に限ると相関度は16.1%しかありません。つまり、業績に対して株価が安すぎるのです。
では、なぜ割安なのか?その理由を冒頭で述べたように考えてみると、米国大統領にトランプ氏が就任してから、鉄鋼や自動車に関税をかけることを名言していました。つまり、現在の株価はこれか発動されるかもしれない関税の影響を織り込んでいる可能性があると言えます。ほかでは、中国市場でBYDが躍進しているというニュースも影響がありそうです。
このように、株価が割安になっている場合には、何らかの理由(リスク)があることを理解しておきましょう。中上級者はリスクを承知のうえで投資しています。そして、うまくいかなかった場合のシナリオ(損切りなど)を最初から準備しています。
・エニーカラー
下の理論株価チャートは<5032>エニーカラーのものです。「にじさんじ」というVtuber事務所を運営している会社です。エニカラーの場合もオレンジ色線の理論株価が右肩上がりで上昇していますが、残念ながら株価は理論値と比較して低迷しています。つまり、割安成長株と言えるでしょう。
決算は今期も2桁の増収増益で、直近では上方修正も出しました。配当利回りもチャート掲載時点で2%あります。エニーカラーについては、Vtuber市場における「にじさんじ」の成長余地を市場が悲観的に見ていると判断できると思います。特にポイントとなるのが、海外市場でも成長できるかどうかですが、決算資料によると横ばいが続いているようです。もちろん、海外で成長できていない現状を打破すれば、大きく上昇する可能性もありますので、そこが投資判断のポイントです。
理論株価チャートの形は、株価と理論株価が連動して上昇している銘柄が理想形ですが、そういう銘柄はもう割安ではありません。従って、理論株価が右肩上がりで株価が出遅れのものを探すと、先のトヨタやエニーカラーのように割安になっている問題(リスク)に辿り着きます。そこから先は、未来を読む投資家の皆さんの判断になると思います。
・ヤマダHD
下の理論株価チャートは<9831>ヤマダHDのものです。日本全国にヤマダ電機の店舗を展開しているので、近くにお店がある人も多いと思います。しかしながら、株価は割安に放置されたまま横ばいが続いています。理論株価の推移を見ても業績が良かったのは、コロナ禍の自宅待機で家電製品の需要が増えた2020~2021年程度で、それ以外の期間はパッとしない業績が続いています。
ただし、配当利回りはチャート掲載時で3.03%、さらに株主優待も100株で2.33%にもなるので、配当や優待を目的として投資する場合、割安株としては悪くないかもしれません。
ヤマダHDは割安株ですが、現時点では成長株ではありません。しかしながら、ヤマダHDは住宅や家具、電機自動車など、他業種連携にも積極的で結果が出ていないものの、少なくとも成長を指向していることは伺えます。今後もし、何かが成功して業績が改善すれば、成長株になる可能性はゼロではありません。
もちろん、成長株へと化けるよりも、現状のままの可能性のほうが高いことは理解しておく必要があります。しかし、多くの成長株が低迷期を経て覚醒しているというのもまた事実ですので、そのような兆候が出れば面白いという観点でウオッチしておくのは悪くないでしょう。
・サンリオ
下の理論株価チャートは<8136>サンリオのものです。ハローキティなどのキャラクタービジネスでおなじみの会社です。業績は長い低迷期間が続いていましたが、2022年の後半から上向きとなり、現在は破竹の勢いで急成長しています。直近の決算では、売上は44.7%増、利益は89%も増えており、ここ1、2年を代表する成長株と言えるでしょう。株価と理論株価の相関度を見ても全期間と直近1年でいずれも90%以上となっています。
しかし、サンリオは割安株ではありません。株価は理論株価とほぼ同じ適正水準にあります。サンリオへの投資を考える場合には、この右肩上がりカーブが今後どれだけ続くかどうかという判断になります。
例えば、現在のサンリオの海外売上比率は3分の1。つまり、まだ3分の2は日本で稼いでいる状況です。ここが投資の検討ポイントです。例えば、任天堂は海外比率が78%、ソニーは77%です。もしも、サンリオの海外比率がまだまだ上昇する余地があるとすれば、将来の企業価値はもっと高いかもしれませんね。
その一方でサンリオは、わずか5年間で株価が20倍にも急騰しています。従って、仮に成長倒れになった場合には、業績、株価ともに大きく下げるリスクも少なくないと考えられます。

まとめ

今回は、割安成長株投資の考え方と理論株価チャートを使った分析事例を紹介しました。成長株だけれど、理由があって割安になっている銘柄、割安だけれど成長条件を満たしていない銘柄(成長株に化ける可能性があるかどうか)、急成長しているけれど、割安ではない銘柄(成長価値を考えると割安かもしれない)など、いろいろなパターンがありました。
投資の仕方は、人それぞれですが、理論株価を見ることで、過去数年の決算を可視化でき、自分の好みの割安成長株にはやく辿り着くことができると思います。
ただし、決算数字には成長してきたシナリオなど、定性的な情報は含まれていません。ここから先は、会社の業績や状況を自分で調べる習慣を身につけてください。そうすることで、割安成長株の候補から投資をして成功する確率が少しずつ上昇していくと思います。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2025年3月15日時点の情報に基づきます。
※あくまでもはっしゃんさん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。

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